大川村の自然へありがとう
                    大川村立大川中学校
                      三年 工 藤 泉 美 
 大川村に山村留学生として来て三年目になり、ここでの生活も最後の一年になった。二年間、大川の自然の中でいろんな思い出ができた。とにかく楽しかったことはもちろん、苦しかったこともあった。でも、中学一年生で大川村に初めて来たときに感じた「来てよかった。」という思いはずっと、そしてこれからも変わらないと思う。
 私は小学三年生の一月二十三日まで、正直、自然に興味がなかった。なぜこの日かというと、初めて大川村に訪れたからだ。兄が、当時工藤家にインターネットが導入されたばかりのパソコンで「大川村山村留学」をみつけたのをきっかけに、高知県大川村へ来たのだった。兄がこれから過ごす村に興味が湧いた。行く先は山、山、山。いつもはのり気ではない山方面へのドライブだった。けれど、私はそのとき文句を言わなかった。それどころか、「うわあ」「きれい」「すごい」と窓の外を見て声をもらした。いつもとは正反対の態度で自然に見入った。大きなゴツゴツとした岩の間を走る川の流れ。杉の木々がずらりと並び、その間から差す陽光でできた光のカーテン。それまで無関心だったのに、大川の自然と出会い変わった。山も空も鳥たちの声も全部全部好きになった。五感で自然を感じて、好きになった。それまで自然に目を向けていなかった私を大川の自然が呼び止めてくれたわけだ。
 その後、兄が中学を卒業するまでの三年間、何度も、大川村に足を運んだ。その度に、自然の知識も増えた。四季による自然の変化も興味深かった。その上、村の人にもあったかくしてもらった。そしていつしか「私もこの自然の中で暮らしたい」という強い思いが生まれた。でも決心することは簡単ではなく、六年生の一月まで悩んだ。けれどやっぱり、初めて大川村に足を踏み入れたときの、あの自然を見て感じた感動が背中を押してくれた。「あの自然の中にきっと、私の特別な三年間が待っている。」そう思って決意した。
 山村留学生になり二年も経つと、自然に目を向けることができるようになってきた。地域の方からも「あそこにきれいな花が咲いているよ。」と教えていただいたり、落ち込んでいたときに「おい。あの岩を見いや。」と言われ、見ると、まるでモアイ像の顔のような岩があり、明るい気分になったりしたこともあった。四ツ葉のクローバー探しも大得意になり、最高で一日に二十個見つけた。今までよく見ていなかっただけで、身近にたくさんの幸せが隠れていた。その幸せが励ましをくれた。これからも、それに気付ける「眼」を養っていきたい。
 私を変えた自然の中での暮らしはあと一年だが、この日々は生涯の私の心の宝物だ。地元の山口県へ帰ったら、今まで向き合えなかった山口県の自然にも目を向けていきたい。
 自分の周りには、実は、たくさんの喜びの種が隠れていた。けれど、これまではそれに気付けなかった自分がいた。さまざまなことに気付かせてくれた大川村の自然に「ありがとう」を伝えたい。そして、卒業しても何度も、この自然に会いにこようと思う。